炭素繊維の安全な取り扱い

下記内容は、全ての炭素繊維に適切な表現とは限りません。各社毎の具体的製品の取り扱いについては、各メーカにお問い合せ下さい。

性状及び取扱い時の注意

1. 性状
(1) 炭素繊維は細く、しかも破断伸びが小さい(高々2 %)ので、取扱いによっては折損したり毛羽となったりし、短くなった単繊維はフライや粉塵となり大気中に飛散し易い。
(2) 炭素繊維の弾性率は高いものが多く、また繊維径が細いのでショートフアイバーは皮膚や粘膜に突き刺さり易く、痛み・かゆみを生じ易い。皮膚の露出、防塵への注意が必要である。
(3) 炭素繊維は導電性を有するのでフライや糸くずが電気系統の短絡の原因になることがある。
(4) 炭素繊維は綴密構造の炭素のため燃えにくい。廃棄物を焼却処理する場合は燃え残った短繊維が浮遊して電気障害を起こさぬよう注意が必要である。
(5) 炭素は生体適合性が良いとされており、炭素繊維あるいはその複合材料は人工生体材料にも使用されている。


2. 取扱い上の注意
 経験に基づいた注意事項を示すと次のとおりです。
(1) 毛羽・粉塵・フライの発生防止
a. 炭素繊維によって起きる障害の主原因は取扱い中に発生する毛羽・粉塵・フライにある。
 短繊維製品はフライ類似形状でもあるので梱包を開き、内容を取り出し、加工するときには局所排気が有効である。
 連続繊維を切断しチョップド糸にするとき、また粉砕してミルドにするときも同様。

b. 連続繊維をボビンから引き出すとき、ガイドでこすると毛羽を生じ、折損するとフライとなる。
 使用ガイド数を減らす、回転ガイドを用いる、糸張力の減少を図る等がフライ・粉塵減少に有効である。

c. 織物、組み物、編み物、縫い合わせたプリフオーム、パンチフェルト等を作るときにも、糸をしごいたり、こすったりするので毛羽・粉塵・フライが発生する。部位を限定して局所排気するとが必要。

d. 清掃を頻繁に行い、清浄管理に努めることが安全・衛生・事故防止の第一歩。
 家庭用の電気掃除機は粉塵により短絡することがある。空気エゼクター式掃除機の使用をおすすめする。

(2) 人体への障害対策
炭素繊維は「強い」と説明すると、糸を手で引きちぎろうとする人がいる。糸が切れず手が切れることがあるので危険な試みは行なわない。
a. 皮膚に付着した場合
 粉塵やフライが皮膚にくっついただけで、むずむずしたり痒いことがあるが「こする」ことは禁物。炭素繊維の一本は細い針金のようなもの。こすると皮膚に刺さって二次的な皮膚の炎症を起こすことがある。
 皮膚に付いたら水か湯で洗い流す。石鹸を用い、流水で洗うとよくとれる。荷造りテープやセロハンテープのような粘着物の接着面で皮膚を軽く叩くようにし除去するのも有効。
 皮膚の痒さは通常一時的であり、刺さった炭素繊維は半日程度で抜け去って痒さもなくなる。予め保護クリームを使用することも効果がある。特に高弾性率繊維を扱う場合に有効 。

b. 目、喉
 いずれも粉塵を防止することが大事で、めがね、マスク等粉塵の付着、吸入を予防すること。特に目の異常の場合は専門医の処置を仰ぐこと。

(3) 電気設備の障害・感電
浮遊しているフライが開閉器や制御機器の中に入り込むと短絡による事故を起こすことがある。 機器内には清浄空気を吹き込み(パージング)、結線部分には絶縁措置(塗料、テープによる保護)をする。
粉塵やフライが浮遊している作業場に電子機器、パソコンを持ち込むときは、プラスチックのケースに収納し、清浄空気で内部を与圧する。
糸くずがプラグに付着していると、コンセントに差し込んだとき感電したり、短絡により怪我をすることがある。保護手袋を着用しプラグを確認する。特に220Vの場合は注意が大切である。電気絶縁部材を製造するガラス繊維製品取扱い作業場では炭素繊維は使用しないよう推奨。


3. 炭素繊維のMSDS
 炭素繊維は危険有害性の分類基準には該当しませんが、日本化学工業協会(日化協)の指針に基づいて作成した炭素繊維原糸のMSDS例を示します。実際の使用に当たっては購入先各メーカーの発行する個別MSDSに従って下さい。
MSDSは安全の保証値ではないので個々の取扱いの実態に応じて適切な作業をするための参考として活用すべきです。近時 新規化学物質も含めて微量化学物質の有害性が注目されていることから炭素繊維複合材料も炭素繊維と各種樹脂、特にエポキシ樹脂等との複合材料として利用されることが多いので化学物質に関する諸規制には留意が必要である。


4. 応急処置
(1) 目に入った時 : コンタクトレンズは直ちに外す。清浄な流水で15分以上洗眼する。
(2) 皮膚に付着した時 : 石鹸を用いて湯または水を流しながら洗い落とす。 粘着テープ等の利用も有効である。
(3) 吸入した時 : 直ちに新鮮な空気のもとに移し、口の中を洗浄する。
(4) 飲み込んだ時 : 多量の水を飲ませ、水と共に吐き出させる。
上記いずれの場合にも、刺激が残ったり、異常があれば、直ちに医師の診断を受ける。


5. 取扱いおよび保管上の注意
(1) 取扱い : 取扱い中に炭素繊維の粉塵やフライが発生し、皮膚、目や咽喉を刺激することがあるので保護具を着用する。
また電気設備の短絡の原因になるので防護措置が必要である。
(2) 保管 : 炭素繊維そのものは劣化しないが、梱包材、紙管、サイジング剤の変質を防ぐため直射日光や高温多湿の場所での保管は避ける。
炭素繊維の種類によっては、大気中150℃以上で徐々に酸化し蓄熱して火災の原因になる恐れがある。メーカーのMSDSを参照のこと。


6. 物理的及び化学的性質
(1) 外観、形状、色等
(2) 引火点 : なし。
(3) 発火性 : 熱処理温度の低い汎用タイプ製品中には、150℃以上の空気中でゆっくり酸化し蓄熱し赤熱状態になることがある。メーカーのMSDSを参照のこと。
高強度・高弾性率製品では、いままで発火性が問題となったことはない。
(4) 爆発性 : なし。 1200g/m3でも爆発しない。
(5) 粉塵爆発性 : データなし


7. 安定性及び反応性
(1) 燃焼性 : 炭素繊維の主成分は炭素であり可燃性である。しかし木炭や石炭のように燃えることはなく、マッチやガスバーナーの炎をあてても着火しない。
建築基準法や消防法では不燃材に区分されている。自燃性はなく、燃料とともに高温で(400℃以上)徐々に燃える(酸化する)が火源を除去すると消える。
(2) 反応性 : 強力な酸化剤で酸化されるがそれ以外の薬品には安定。
(3) その他 : 導電性があるので電気系統の短絡の可能性がある。


8. 廃棄上の注意
(1) 炭素繊維の廃棄物及び塵芥は必ず一般ごみと区分し、産業廃棄物として取り扱う。
廃棄物分類は「廃プラスチック」に分類される。
(2) 地方自治体の条例がある場合は取り決めに従う。
(3) 廃棄方法は土中への埋立が適切である。
(4) 焼却処理はしない。
炭素繊維は一般ごみの焼却炉では完全には燃えない。電気集塵機用設置炉では燃え残りの短い繊維(フライ)により電気短絡事故の原因となる。


9. 輸送上の注意
 水漏れ、破袋防止に注意。チョップド糸等短繊維の場合破袋し内容物がこぼれでたら掃き集めて空容器に回収し8の手順にしたがって産業廃棄物として処理する。


10. その他の情報

化学物質の有害性情報入手データベース例

(1) 化学製品情報データベース (社)日化協:http://www.jcia-net.or.jp/
(2) 化学物質に関する情報(国立医薬品食品衛生研):http://www.nihs.go.jp
(3) 石油化学工業協会製品安全データシート:http://www.jpca.or.jp
(4) Where to find MSDS on the internetht:http://www.ilpi.com
(5) MSDS Search:htpp://www.msdssearch.com
(6) OSHWEB のMSDS 項:http://www.oshweb.org