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FAQ

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FAQ

Q1 炭素繊維は、なぜ軽くて強いのですか?
Q2 炭素繊維と他の炭素材料(木炭、黒鉛)との違いを教えてください。
Q3 炭素繊維は、何からつくられるのですか?
Q4 PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維について、その性質や用途について、主な違いを説明してください。
Q5 炭素繊維はなぜ電気や熱を良く伝えるのですか?
Q6 ピッチ系炭素繊維の分類呼称がいろいろありますが。
Q7 炭素繊維は炭素で出来ていますが燃えやすくないのですか?
Q8 炭素繊維製品は、リサイクルできますか?
Q9 炭素繊維の安全性について、説明してください。



Q1 炭素繊維は、なぜ軽くて強いのですか?
A1

物質の重さは,密度(g/cm3)によって表されます。密度は物質を構成する原子の重さ(原子量)とその原子がどのように配列しているか(結晶系)などによって決まります。例えば、みなさんの近くにある金属では、アルミニウムの原子量が27.0、鉄が55.8、金が197.0です。一方、炭素の原子量は12.0と金属原子の原子量と比べ、1/2~1/10以下です。

また、結晶系によっても密度が変わります、同じ炭素原子から出来ていても、ダイヤモンドの密度が3.52g/cm3、黒鉛の密度が2.25g/gm3と密度が異なります。これら、炭素原子の配列の仕方により炭素原子間に隙間が異なるためで、ダイヤモンドに比べ黒鉛結晶の隙間が大きいためです。炭素繊維は黒鉛結晶が配列することによりで来ているため,金属と比べて軽いことがおわかりいただけたでしょうか。

炭素繊維は、前述の黒鉛結晶が配列することにより出来ています。黒鉛は、ベンゼン環が縮合した六角網平面が積み重なった構造をしています。積み重なり方向の結合は、分子間力という非常に弱い力なので簡単に剥がれてしまいます。
一方、六角網平面内での炭素原子は、3方向の炭素原子と互いに強固な共有結合で繋がれているため、網平面方向の引っ張り強度が非常に強いことがおわかりいただけると思います。(ダイヤモンドが硬いのは全ての炭素原子が共有結合のみで結びついているためです。)
以上より、炭素繊維が軽いのは黒鉛結晶の隙間が大きいためであり、炭素繊維が強いのは、黒鉛結晶の有する網平面方向の強度が反映されたためです。

Q2 炭素繊維と他の炭素材料(木炭、黒鉛)との違いを教えてください。
A2

炭素繊維も炭も同じ炭素材料の仲間です。その結晶構造も同じグラファイト構造をもっていますが、その構造の規則性や配列などで著しく異なっております。炭素繊維では、炭素原子が繊維方向に規則正しくならんだ網目構造をもち複数の層が何段も重なり絡みあっています。炭では、この層構造が無定形で規則性も少なく強固な絡みあいも少ないため壊れやすい構造の強度も弱いものです。同じような仲間に黒鉛がありますがこれは規則的なグラファイト構造が大きく発達した材料を言いますが、中国やインドなどでは天然にも採取できることで知られています。 黒鉛も軟らかく滑り易いことはご存知の通りです。

図は、炭素繊維が炭素化・黒鉛化工程での処理条件下でその構造がだんだん創られてくる「擬似構造」を描いたものです。高温処理と延伸によって炭素原子が繊維方向にそって規則正しく配向していることがわかります。
(Source: A. R. Bunsell, Fibre Reinforcements for Composite Materials, Amsterdam, The Netherlands: Elsevier Science Publishers B.V., 1988, p. 120.)

※画像をクリックすると拡大表示されます。

Q3 炭素繊維は、何からつくられるのですか?
A3

衣料でお馴染みのアクリル繊維や石油の重質成分や石炭の乾留で得られるコールタールの仲間などを原料としてつくられています。詳しくは、「炭素繊維はこうしてつくられる」を参照してください。

Q4 PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維について、その性質や用途について、主な違いを説明してください。
A4

PAN系炭素繊維は、一般的に密度1.74-1.95g/cm3の直径5-7ミクロンの長繊維(フィラメント)の集合体で、レギュラートウあるいはスモールトウと呼ばれる1K(1000フィラメント)、3K(3000フィラメント)、6K(6000フィラメント)、12K(12000フィラメント)、24K(24000フィラメント)が、その低密度、高比強度、高 比弾性率を生かして航空機、スポーツ・レジャー分野で多く使われ市場拡大を担ってきました。また40K(40000フィラメント)以上のラージトウは引張強度などの性能がやや低いものの、比較的安価な製品として産業分野を主としてレギュラートウとともに使用されてきています。またPAN系は、引張弾性率の範囲で汎用タイプ(~240GPa:HT)、中弾性タイプ(~300GPa:IM)、高弾性タイプ(350GPa~:HM)に分類されます。

ピッチ系炭素繊維は、紡糸法の違いにより長繊維タイプと短繊維タイプがあり、原料ピッチの違いにより、等方性(難黒鉛化性)と異方性(易黒鉛化性)があります。等方性ピッチ系短繊維は、一般的に密度1.6g/cm3の直径12-18ミクロンの短繊維で、繊維軸に沿った炭素の配向構造が弱く、黒鉛結晶の発達も少ないため、弾性率(~40GPa)、強度、熱伝導率が低い性質をもっています。ただし、軽量、耐薬品性、耐熱性、摺動性などの特性から、広く産業分野で利用されています。

一方、異方性ピッチ系炭素繊維はメソフェーズピッチ系炭素繊維とも呼ばれ、一般的に密度は1.7-2.2g/cm3で、直径は7-10ミクロンの長繊維(フィラメント)の集合体で、1K、2K、3K、6K、12Kがあります。その熱処理(焼成)温度により、低いものでは6GPa、高いものでは935GPaと、PAN系では得られない幅広い引張弾性率を有します。高弾性率タイプ(350GPa~)では、2.5GPa以上の高強度をもつことから加工性にも優れており、複合材料成形品として鉄を超える剛性で、重量が1/2以下という性質を生かし、産業分野やスポーツ・レジャー分野で広く利用されてきています。また、ピッチ系超高弾性率炭素繊維(600GPa~)は、その優れた剛性のほかに金属と同等以上の熱伝導率をもち、軽量であることを生かした用途も広がりつつあります。
詳しくは、「炭素繊維製品の製品形態からみた種類とその用途」および「主な用途分野」を参照ください。

Q5 炭素繊維はなぜ電気や熱を良く伝えるのですか?
A5

炭素繊維は黒鉛の結晶構造を基本構造とした繊維です。Q1の黒鉛の結晶構造図をご覧ください。芳香族を構成する六員環(ベンゼン核)を取り巻く電子はπ電子と呼ばれています。π電子はベンゼン核を構成する炭素のどれかに属するのではなく、自由に動いています。このベンゼン核が縮合したのが芳香族面であるため、この面内であればπ電子はどこにでも移動することができます。言い換えれば、この構造に対して電位差を与えればその間で電子は流れることになり、「電気が流れる」ことになります。もしこの芳香族面に何らかの欠陥があると、「越すに越されぬ大井川」状態になり電子はその欠陥間を飛び越えることができなくなります。すなわち黒鉛結晶構造が規則的であるほど電気の良導体と言えます。
一方、熱はπ電子ではなくて、結晶中の原子(格子)が振動することによって伝えられます。黒鉛結晶構造の面のように整然とした構造の場合にはその面に沿った方向のように、振動がよく伝わります。炭素繊維が熱の良導体であるのは黒鉛結晶構造の面に沿った格子振動によるものです。なお木炭などの、結晶の発達していないものは格子振動が弱く、また欠陥が多いため、電気と同じく熱の伝達が欠陥で阻害されると考えられます。

Q6 ピッチ系炭素繊維の分類呼称がいろいろありますが。
A6

原料ピッチは、偏光顕微鏡で観察した場合に、光学的に無秩序で偏向を示さない等方性ピッチと、構成分子が液晶状に配列し、光学的異方性を示す異方性ピッチ(メソフェーズピッチ)に分けられます。炭素繊維は、炭素六角網面が規則正しく積み重なった黒鉛結晶構造を頂点として、その構造の乱れ、空隙・欠陥の存在分だけ機械特性、電気および熱の伝導性が低下することは別のFAQでも言及しています。さて、この構造の規則性は、原料ピッチの構成分子配列の規則性を色濃く反映するため、異方性ピッチから製造された炭素繊維は等方性ピッチから製造された炭素繊維より、機械特性に優れ、電気および熱の伝導性が高くなります。原料ピッチのこの光学的呼称の違いをピッチ系炭素繊維の分類に持ち込んだ呼び方が最も良く使われています。他の呼称も含め下表にまとめました。

機能面 原料由来
高機能 HPCF
High Performance Carbon Fiber
異方性ピッチ系 メソフェーズ・ピッチ系
汎用 GPCF
General Purpose Carbon Fiber
等方性ピッチ系 イソフェーズ・ピッチ系
アイソフェーズ・ピッチ系
Q7 炭素繊維は炭素で出来ていますが燃えやすくないのですか?
A7

Q1で述べていましたように炭素繊維は規則正しい網目構造をもちますが、木炭は、規則性も少なく強固な絡みあいも少ないため壊れやすい構造になっています。
炭素は酸素と反応して二酸化炭素になります(C+O2→CO2)。この化学反応を酸化反応といい、温度が或る温度(酸化開始温度)を超えると急激に反応が進行します。この反応は発熱を伴うため、発熱して温度が上がると、さらに酸化反応は起きやすくなります。燃焼とは、(酸化反応→発熱→温度上昇→酸化反応性高)の循環を断ち切ることができず、酸化反応が激烈に起きている状態を言います。
さて上記の酸化反応の程度は①温度、②炭素の供給、③空気の供給に依存します。①の例としては放水による消火が挙げられます。水の蒸発潜熱により冷却して酸化反応を抑えることを意味します。毛布やシーツで炎を包み込む消火方法が③の説明になります。空気中の酸素を遮断して酸化反応を抑えます。そして結晶構造による燃焼性の違いは、②の因子で説明されます。
話しをわかりやすくするために、炭素はスクラムを組んだ人たち、酸素はその人たちを引き剥がす人たち,温度が引き剥がす人たちの力としてください。炭素繊維はがっちり腕を組んだ状態の人の集団と同じで、人を引き剥がすこと(酸化反応)が容易ではありません。スクラムの外側の人を数人剥がしても、引き剥がす力(温度)があまり強くなりません。それに対して木炭は、よちよち歩きの子供が端っこにいたり、片方の手でしか繋いでいない人が存在するような集団と同じで簡単にスクラムから人は引き剥がされます。また腕をしっかり組んでいても、隙間だらけであれば、引き剥がし側は手分けをして、スクラムを組んだ人たちの間に潜り込んで、徐々にスクラムを崩してゆくでしょう。引き剥がされる人が増えれば,徐々に引き剥がす人の力が強くなり(温度が高くなる)、急速にスクラムが崩れて行きます。 規則的な配列で炭素原子同士の結びつきの強い炭素繊維は燃えにくく、不規則な構造で空気が入る隙間の比較的多い木炭は燃えやすいことになります。また炭素繊維に限って言えば構造が規則的であれば、あるほど燃えにくいことになります。

Q8 炭素繊維製品は、リサイクルできますか?
A8

炭素繊維協会では、リサイクル委員会という組織を設けて炭素繊維メーカー協同でリサイクルの取り組みを進めています。粉砕後、鉄鋼炉の還元剤としてリサイクルする技術は既に実用化を行っています。熱分解して炭素繊維を効率的にリサイクルする技術についても、技術開発を進めています。

Q9 炭素繊維の安全性について、説明してください。
A9

「炭素繊維の安全な取扱い」を参照してください。